ここでは基本的なリクガメの飼育方法を紹介します。
あくまで基本なので種や個体差によって多少の違いはあります。
リクガメはとても繊細な生き物で、日本の自然界では存在しませんので適切な飼育器材がなくては生きてはいけません。
リクガメはとてもデリケートで個体差はありますが、環境が変わると慣れるまで餌を食べない場合もあります。慣れるまではそっと見守ってストレスを与えない様にしてあげましょう。
★まずはケージを用意して環境を整えましょう。
ケージは、元々広い自然界に居る生物なので広ければ広い方がより良いですが広過ぎると温度湿度を保つのは難しくなります。
大体の目安でケージ幅と奥行きを足して甲長の約10倍以上あった方が良いでしょう。
例えば甲長10cmある個体には10cm×10=100cm以上必要です。
ケージ幅60cm+奥行45cm=105cmでしたらぎりぎりですが
同じケージ幅60cm+奥行30cm=90cmなので狭いと思って下さい。
途中買い替える事を考えれば最初から幅80cmや90cm位のケージを用意されるのをお勧めします。
★大事なのは温度、湿度、紫外線、餌などです。
温度は全体に30度〜33度に保てる環境が必要です。スポット下では35〜37度。全体に温度を保つには保温球で、日中のスポットにはバスキングライトを使用するのが一般的です。
※バスキングライトでケージ全体が暑くなり過ぎる場合にはW数を下げるか切ってしまって下さい。(必ずしもバスキングスポットで温度を高くする部分が必要という訳ではありません。)
幼体は昼夜を問わず同じ設定で全体に32℃位を保って下さい。
成体でも夜間は日中より1℃程低くする位の設定が無難です。
※いずれの場合も種類や個体によって適正温度は違ってきます。
必ず爬虫類用のサーモを使用して下さい。
サーモなしで年間通して適温を1日中保つ事はまず不可能です。
湿度は種によって適正な%が違いますので飼っているリクガメがどのタイプか知っておく必要があります。
霧吹きをしたり、加湿器などを利用して湿度を上げます。
下記表はあくまで目安です。
ベビーとアダルトではベビーの方がより湿度を高めにした方が呼吸器感染症にかかり難くて良いです。
多湿系 | 60〜80% | アカアシガメ、エロンガータ、セオレガメ、ムツアシガメ、 インドホシガメ、ビルマホシガメ、ゾウガメ等 |
やや乾燥系 | 50〜60% | フチゾリリクガメ、ホルスフィールド、ヘルマンリクガメ等 |
乾燥系 | 40〜50% | ケヅメリクガメ、ヒョウモンガメ、チャコリクガメ、ソリガメ、 ギリシャリクガメ等 |
※ 乾燥系と言っても日本の冬は超乾燥している上、人工的に温度を上げると10%までにも下がる場合があります、冬はいずれも加湿が必要だと思ってください。
・ 紫外線はリクガメの骨格や甲羅の形成は欠かせません。
必ず紫外線ライトやメタハラ(メタルハライドランプ)を設置してください。
※紫外線ライトの紫外線量は使用と共に段々減少していきます。
点灯していても1年位で新しいものと交換して下さい。
・ 専用の床材も必ず使用してください。新聞紙などは歩行障害の原因となります。床材は湿度を保つ為にも不可欠です。
・ 水入れは浅くて、面積は体が全部浸かれるほどの大きさの物を用意してください。体温調整や、水分補給、湿度の調整にもなります。
特にベビーはここでひっくり返らない様に床材に埋めるように設置して縁と床材をフラットになるようにして下さい。
・ 餌はリクガメフードだけではなく、リクガメに合った野菜や野草を与えてください。市販の野菜だけではカルシウム不足になる可能性がありますので、サプリメントのカルシウム剤を餌にふりかけて与えて下さい。
リクガメフードは小さいベビーや成長が遅い個体、体力を付けたい時などは割合を多くするなどして上手く利用して下さい。
餌は主食(特に小松菜)をメインにして色々取り混ぜて与えて下さい。
野菜を1種類だけなどでバランスも良くないですし、飽きるのか、食いが悪くなる場合もあります。
・ 食事は消灯(紫外線ライトやバスキングライトの消灯)の1〜3時間前位には済ませましょう、食べて直ぐ消灯すると未消化の原因になります。その日に残った餌は綺麗に取り除きましょう、放置していると不衛生になり易いです。
■主食には市販野菜類では小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤ、カブの葉、ダイコンの葉、サラダ菜などが代表的です。野草ではタンポポ、オオバコ、クズ、ハコベ、ノゲシ、クローバー、ムラサキツメクサ、カラスノエンドウ、ナズナ、などです。 他に多肉植物やサボテンも主食として利用できます。 ※野草は除草剤や排気ガスのかかっていない安全なものを採取してください。 |
■副食には、市販野菜類でグリーンリーフ、サニーレタス、レタス、ターツァイ、空芯菜、キュウリ、ニンジン、カボチャ、オクラ、菜の花などが代表的なものです。 |
■他に果物で、オレンジ、いちご、リンゴ、バナナ、マンゴー、キウイなどですが糖分が多いので頻繁には与えず、たまのご馳走として少しだけあげて下さい。 |
★温浴について
温浴には賛否両論ありますが、飼育下では自然界に比べてどうしても運動不足ぎみになりますのでその代わりに代謝をあげたり、体を清潔に保ち、排便を促したり、水分補給などの効果はあります。
回数に決まりはありませんが、まず甲羅等に汚れが付着してきたら必ず行ってください。種や個体差で温浴によって、無理に排便させる事になったりストレスになったりする場合もありますので様子を見ながら適量の回数、1日1回や3日に1回、1週間に1回など、を見極めて行って下さい。
まず個体が入れるサイズの洗面器などを用意して大体40℃位のお湯を個体が十分息が出来る位の水位まで入れます。
※溺れるなど事故を防ぐ為その場から離れない様にして下さい。
洗面器は尿や便の色をチェックし易い様に白か透明の物がお勧めです。
排便をしたら直ぐにあげて体を良く拭き適温に保ったケージに戻してあげて下さい。便をしなくても約10分位で終わりましょう。
気を付けないといけないのが、特に冬など部屋の温度が低いとリクガメの口から入る空気温度も低い為、返って体を冷やし呼吸器感染症を引き起こす原因になります。
必ず温浴する際には部屋も暖かくしてください。
温浴後は餌食いが良いので直ぐに食事タイムにしましょう。
★多頭飼いについて
リクガメは自然界では単独行動ですが、飼育下では仲良く共存していける個体も多く、単独より複数居た方が相乗効果で活発になり、餌食い等が良くなる場合もあります。
ただし、個体によっては噛み付きあいなど事故の恐れがありストレスを感じて弱っていく個体も居ます。
なので、多頭飼いする時は様子を見て問題がないかどうか確認の上して下さい。
でも、最低限同じ種類同士にして下さい。
例えばインドホシガメとケヅメリクガメを一緒になどはもっての他です。環境も違えば性格も違いますので恐らくインドホシガメの方が弱っていくでしょう。
それと、種によって潜在的に持っている菌が違いますので、元々持っていない個体に菌が感染するとてき面に弱ります。
他にも沢山種別に注意点などがありますが、詳しくは最近出ている飼育本やリクガメのHPなどを参考にして下さい。ただし、間違った情報も沢山出回っておりますので鵜呑みにせず注意も必要です。 2014年6月トータス・スタイル店長監修のリクガメ飼育本『リクガメ。幸せに暮らす飼い方・育て方』が発売されました。更に詳しく解説しておりますので是非、参考にして下さい。※2021年6月に改正版『もっと知りたいリクガメのこと 幸せに暮らす飼い方育て方がわかる本』が発売されましたので是非ご覧ください。
また、当店の「よくある質問Q&A」も参考にして下さい。
どんな理由があってもリクガメを飼えなくなったからといって遺棄(川原や公園に捨てたり)するのは法令違反となりますし、日本の自然界では生きてはいけませんので、飼う以上は責任を持って最後まで面倒をみてあげて下さい。やむを得ない事情がある場合は知人に譲るか当店で引き取る事も可能です(状態にもよります)ので、ご相談ください。
以上の事を踏まえて、適切な飼育方法ではるばるやって来たリクガメを長生きさせてあげましょう。